ゴーン・ショック、水道民営化…日本の消費者に「フランス企業」敬遠の動きが広まるか?
世界中を震撼させた日産のゴーン会長逮捕劇。しかし日本では、それ以外にも、いわゆる水道民営化問題の警戒意識ど、大衆世論にフランス企業を敬遠する動きがある。そういえば、近年、小売り関係でフランス企業の日本撤退も相次いでいる
▼▼ここ最近、フランス企業をめぐるニュースに関心が集まっている
①ゴーン・ショック
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Flags of Japan, France and Nissan are seen at Nissan Motor Co.’s global headquarters in Yokohama, Japan November 22, 2018. REUTERS/Toru Hanai (Japan) by 写真:ロイター/アフロ
紙フィナンシャル・タイムズは20日、日産のカルロス・ゴーン容疑者が逮捕前に、同社と自身が会長兼CEOを務めるフランス自動車大手ルノーの経営統合を検討していたと報じた。ある関係者によれば、数カ月内にも行われる見通しだったという。
「ルノーが日産をのみこむ」。これに日産は猛反発。ゴーン会長と“ミニゴーン”と呼ばれる西川社長の亀裂が深まった。
ブルームバーグ通信(18年5月23日付)は、「日産の西川社長は、合併の必要性には懐疑的な姿勢を公にしている。ゴーン氏は日産側に『抵抗があるとは考えていない。パートナーとして取り組んでいこう』と呼び掛けた」と報じた。
結局、両者が和解することはなかった。ゴーン氏が仕掛ける仏ルノーによる日産の買収が、ゴーン氏を追い落すクーデターの起爆剤となったのだ。
カルロス・ゴーン容疑者(64)を会長職から解任した日産は、一気にルノー支配を断ち切るつもりだ。自主独立の経営体制を画策している西川広人社長は、ルノーとの資本関係を見直し、経営の自主性を高める方針だという。ゴーンの後任会長も自分たちで決めようとしている。しかし、本当にうまくいくのかどうか。ルノーやフランス政府は黙っていないからだ。
②水道民営化
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A bottle of water with the logo of Veolia Environnement is seen in Paris in this February 26, 2015 file photo. French water and waste group Veolia Environnement is expected to announce first half res… by 写真:ロイター/アフロ
政府が進める水道民営化をめぐり「ウォーターバロン」とも呼ばれる水事業大手企業の日本市場への本格参入を危惧する声もネット上や雑誌に相次いでいる。肝心のフランスの首都パリでは民営化による水道料金高騰が問題になり、再公営化されている
これに対し、ネットや雑誌などには「ヴェオリアやスエズといった海外の水メジャーに事業が乗っ取られる」「水道料金が上がるのでは」といった批判的な論調が多く見受けられる。
1980年代、フランスの上下水道の市場が飽和し、大統領のトップ外交によって海外進出が図られた。ヴェオリア、スエズは先行者の利を活かし、民営化された世界の水道事業を握り、「水メジャー」「ウォーターバロン(水男爵)」などと呼ばれた。
パリ市では、1984年、水道施設の運営権を民間事業者に付与する公設民営方式の契約が世界的水メジャーであるヴェオリア社とスエズ社との間で締結されました。しかし、25年間の契約期間の中で水道料金が2.25倍に高騰した。また、財務の不透明さ、説明責任の欠如に対しても市民の批判が高まって、2010年に再公営化が実施されております。
③エールフランス皇居上空を低空飛行
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An Air France airplane lands at the Charles-de-Gaulle Airport in Roissy, near Paris, France, August 26, 2018. REUTERS/Christian Hartmann (France) by 写真:ロイター/アフロ
フランスのナショナル・フラッグ・キャリアであるエールフランス航空の羽田発パリ行きの便が、誤って皇居上空を含めた都心を低空飛行した不祥事があったのは先月のこと。このヒヤリとするような出来事にも関心が集まった
羽田発パリ行きのエールフランス293便が先月、規則に違反して皇居上空など都心を低空飛行した問題で、誤った経路を飛んだのはパイロットの操作ミスだったことが、国土交通省への取材で分かった。エールフランス社は八日、同省に「経路選択機能のスイッチを入れるのをパイロットが怠ったことが原因」などとする報告書を提出した。
日本航空でパイロットを四十年務めた航空評論家の小林宏之氏は「離陸時にここまで都心上空に入る例は前代未聞。乗務員が規則を見落としたか、離陸直後に乗務員の注意をそぐ事態が起きた可能性がある」と指摘する。航空評論家の青木謙知氏は「自動操縦では考えられない事態。手動操縦で誤ったか、機材のトラブルの可能性もある」とみる。
▼▼日本で近年パッとしないフランス企業 小売業界は撤退も相次ぐ
おととし日本を去ったプランタン百貨店
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Printemps Ginza signboard on display at the entrance of its department store on December 16, 2015, Tokyo, Japan. The Japanese store announced that its trademark licensing agreement with France’s Prin… by 写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ
プランタン百貨店は1980年にダイエーの提携で日本進出し、最盛期は全国10店舗まで拡大したが、閉店が相次ぎ、近年は国内旗艦店舗のプランタン銀座のみが残っていたが、おととし幕を下ろした
暮れも押し詰まった2016年12月31日の午後4時過ぎ、銀座の歴史に華を添えた店舗がまた1つ姿を消した。
「都内で唯一のフランス系デパート」として長年親しまれた銀座三丁目の百貨店「プランタン銀座」が32年の歴史に幕を下ろしたのだ。
他の百貨店とは一味違った「フランスらしさ」と「銀座らしさ」を兼ね備えたオシャレで華やかな場所として、都心で働く若いOLを中心に人気を集め続けた。
しかし、リーマンショックを経て2010年代に入り、消費者の趣向の変化とともに銀座に「カジュアル化」の波が押し寄せると、プランタン銀座も大きな転機を迎える。駅ビルなどとの競合も激しくなった近年は、かつての高級路線からは大きく舵を切るかたちで「自主編集売場の縮小」と「テナント化」を進めており、客層も大きく変化。
しかし、そうした経営手法は「プランタン」の終焉へと繋がってしまったのかもしれない。2015年12月、プランタン銀座は2016年12月末に迎える商号使用契約期限を更新せず「プランタン百貨店」としての営業を終了、閉店することを発表した。閉店に至った大きな要因としては、プランタン銀座が「カジュアル化」したことにより、高級百貨店である「オ・プランタン」と経営方針の相違が生まれるようになったためであるとも言われている。
IKEAやコストコが大人気でもカルフールが日本を去ったワケ
今でも人気のコストコ(アメリカ)やIKEA(スウェーデン)など外資系大型店の日本進出ブームのあった2000年代。その代表格として流通界の「黒船襲来」とも呼ばれ、鳴り物入りで日本上陸しながらもあっけなく撤退したのがカルフールだった。失敗の背景には、かたくなにフランス流を押し通す社風があったと言われている
大手スーパーの日本進出のパイオニア「カルフール」は、2005年に早々と日本から撤退してしました。
その大きな理由のひとつに、フランス人幹部の傲慢さが挙げられていました。
それは、日本人幹部の意見を受け付けない、フランス流を踏襲させようという社風が、日本人従業員に反感を持たれたようです。
これは、品揃えや売り場作りにも表れていて、「カルフール」が、あくまでフランス流を押し通すというビジネス形態を変えようとしなかったことが、従業員だけでなく、日本の消費者にも受け入れられなかった結果だったようです。